刺激的な仕事 日本語教師

日本語教師の魅力とは?異文化交流を肌で感じる刺激の多い日々

日本語教師というと「英語で教えるの?」と思う人が多いのですが、多国籍の学生が集まる日本語学校では日本語しか使いません。 学生の中には日本人と同じように、英語がほとんど話せない人も多いのです。 教室での共通語はもちろん日本語。 教師も生徒も日本語でコミュニケーションをとります。 インドネシア人とフランス人がたどたどしい日本語で会話したり、中国人がサウジアラビア人に漢字を教えてあげたりするのです。 ときには生徒の日本語が誰にも伝わらない、ということもあります。 教師は生徒の言葉がみんなに伝わるように言葉を変え、表現を工夫します。 ある韓国人が「しゃぶしゃぶを食べた」と言ったとき、マレーシア人の生徒に「しゃぶしゃぶ」が伝わらなかったことがありました。 日本人なら、薄くスライスした肉を熱湯にくぐらせて食べる鍋料理、とでも説明するでしょう。 でも初級クラスには伝わりません。 私もどう説明したものか考えていたところ、まだ日本語に慣れていなかったその韓国人はこう説明しました。 「しゃぶしゃぶは……すき焼きの友達!」 すき焼きは海外でも有名な日本の鍋料理。 細かい説明は省いて、最低限の語彙で鍋料理であることを伝えたのです。 マレーシア人も含め、教室にいた全員が納得していました。 お好み焼きを説明するのに、「日本のピザ」と言った生徒もいました。 生地に肉や野菜を入れて焼くからピザと似たようなもの。日本人にはない発想です。 ときには教師より生徒のほうが分かりやすく説明してくれることもあるのです。 ただ教えるだけではなく、教えられることも多いというのも日本語教師の魅力です。 生徒から学ぶと言えば、各国の文化や考え方。 リアルタイムで生の声を聞くことができます。 中国で流行っているとテレビが報道したものが、実は中国の北の方の一部だけだったというようなことはよくあります。 「中国では〜」という主語はほとんどないようです。 国土が広いため、気候も料理も文化も地域によって様々だとか。 そのため「中国は〜」でなく、「上海は〜」「北京は〜」と話す生徒が多いです。 地方出身の中国人は、日本人講師と同じように上海の話をウンウン頷いて聞いていることも。 文化や考え方は、同じ国だからとひとくくりにできない難しさとおもしろさがあります。 日本も地方によって違う部分は多いのですから、国土の広い国ならなおさら。 と頭では分かっていても、やはり生の声を聞いて初めてちゃんと理解できたように思います。 日本語学校では日本語を使って多国籍の生徒がコミュニケーションをとるため、国籍の違う友達も増えます。 交際となると同じ国同士が多いのですが、日本語をツールに国籍の違う交際が始まることもありました。 私が最も印象に残っているのが、中国人の男性と韓国人の女性のカップル。 しかも来日二ヶ月で交際に発展したのです。 日本語力ほぼゼロで来日して二ヶ月です。 どのくらいの日本語が話せるかと言うと、「雨だから、遅刻しました」「時間があれば、旅行したいです」というくらい。 小学校低学年の国語の教科書が読めて、最低限のコミュニケーションがとれるレベルです。 お互いにその日本語力で交際というので、職員室でも話題になりました。 どうやら男性側の一目ぼれだったようですが、女性側も好感を持っていたようです。 美男美女でお似合いのカップル。 相手ともっと話したいと思うからか、2人ともメキメキと日本語での会話が上達していきました。 二人が日本語で話すものだから、周りの生徒も触発されて日本語をどんどん話すようになりました。 中国人生徒と韓国人生徒のつながりも増え、そのクラスの雰囲気はとても良くなったと担任教師も喜んでいました。 長期休みにはお互いの国へ行き、両親への挨拶もしてきたそうです。 これは結婚か!とどよめいていたものの、結局1年ほどで破局。 友人関係に戻るということでした。 詳しい事情は分かりませんが、日本語学校は長くても二年間。 進路や将来のことも考えると、好きだけでは続かないようです。 リアルな国際恋愛の始まりから終わりを見ました。 多少のしこりもあったようですが、二人は卒業まで仲の良い友人でした。 よくあることではありませんが、こんな経験ができるのも日本語教師ならではです。 男女の交際だけでなく、親友ができたと喜ぶ生徒もいました。 同じ国同士で固まりがちではありますが、敢えて違う国の生徒に近づいていくタイプの生徒も少なくありません。 本人たちもビックリするほど気が合って三人で行動をしていたのは、韓国男性とサウジアラビア男性と中国系の女性。 なかなかおもしろい光景でした。 日本語と、ときに英語を混ぜて会話を交わす三人は、国際交流のポスターそのもの。 日本語が上手な韓国男性が会話のフォローをしつつ、若くて元気な女性が盛り上げ、唯一の既婚者であるサウジアラビア男性の話に耳を傾ける。 三者三様に留学を楽しんでいて、見ている教師も笑顔になってしまいました。 日本語学校は、日本人の通う学校や塾よりも生徒と教師の距離が近いのも特徴です。 進学や学習相談だけでなく、日本での生活や日本人とのかかわりについての相談を受けることもあります。 夏になると花火大会やお祭りに興味を持つ生徒が多く、「浴衣はどこで買えるのか」とよく聞かれます。 何度も着るものではないので安くあげたいでしょうし、日本語もまだまだ未熟。 間違って呉服屋さんに行っては大変です。 できれば実際に見て選びたいし、下駄や巾着も欲しい。 なかなかの難題です。 そういえばしばらく浴衣を買っていないことに気づきます。 日本に関することは、別の生徒のほうが情報を持っていることも少なくありません。 教師の持つ情報と生徒たちの情報を合わせて、結局ショッピングモールやファッションビルを勧めることが多いです。 日本に住んでいるからといって、日本に親しんでいるわけではないというのは、日本語教師になって強く感じました。 浴衣に合わせるかんざしの刺し方は生徒に教えてもらいましたし、日本のドラマやアニメに関しては生徒の知識量には適いません。 日本のドラマやアニメが好きだという生徒は、来日時点で話すのも聞くのも驚くほど上手です。 ハマった番組によっては、女性言葉が身についてしまった男性やサムライ風の女性なんてこともありますが。 ドラマやアニメが好きな生徒に共通するのは、日本語で理解したいし感想も日本語で言いたいということ。 だからこそ、サブカルチャーに詳しい教師は、生徒と仲良くなるのも速いです。 サッカーや音楽なども同じ。 共通の趣味があることで、すぐに打ち解けることができます。 もちろんサッカーの勝敗で激論となることもありますが、それもコミュニケーションの一部です。 日本を知ると外国人と仲良くなれる、というのは目から鱗。 日本語教師になって分かったことです。 海外で働く日本語教師は多くいますが、日本国内でも需要のある仕事です。 日本にいながら国際交流ができ、学ぶことの多い毎日が過ごせます。 日本語教師の最大の魅力はこの刺激。 常に刺激にあふれていて、変わらない毎日というものがありません。 毎日新しい発見があり、ときにはまさに度肝を抜かれるという言葉がピッタリな事件も起こります。 コンビニでジュースを買ったつもりが、アルコール入りのチューハイだったという生徒もいました。 確かに見た目はジュースと同じ。 授業中にアルコールを飲む姿に、周りが騒然となりました。 いちいち驚いていたら身が持ちません。 日本にいながら日本とは思えない日常が送れる仕事、それが日本語教師です。 日本語教師になりたいなら、とある試験に合格するのが近道です。 ※日本語教育能力検定試験についてなど